Columnコラム

Paget-Schroetter症候群(原発性上肢深部静脈血栓症)

記載者:上村公介

上肢にできる静脈血栓症で、スポーツする人では激しい上肢運動による突然で強い上肢の痛みおよび腫脹を臨床症状として発症します。

リスク因子

・胸郭出口の解剖学的異常

・激しい上肢運動

・繰り返す上腕の屈曲運動

・筋肉質な若い男性

症状

・上肢の腫脹と痛み

・下肢同様に肺塞栓症となることもある

・慢性経過としては側副血行路(Urschel’s sign)が出現することもある

治療

・抗凝固薬

・血栓溶解(tPA)

・胸郭出口の外科的減圧(第一肋骨切除など)

などはある程度、確立された治療法です。

静脈形成術は必要性や時期など議論の分かれるところのようです。

下肢との違いは、上肢の解剖学的な異常が要因となっていることが多く、このリスク要因を取り除くことが再発予防につながるので、外科的処置が選択されます。

コメント

野球などの上肢を使うスポーツをされる方で胸郭出口症候群の症状がある人は要注意な疾患です。発症後も外科的手術と併せて抗凝固薬を少なくとも3か月程度、内服することが推奨されています。運動復帰については抗凝固薬を内服しながら、徐々に復帰をさせて、抗凝固薬を終了した段階でコンタクトを含む運動を許可するなど、エビデンスの乏しい領域のため、リスク・希望をよくすり合わせた意思決定支援が鍵となります。

参考

Paget-Schroetter syndrome: A contemporary review of the controversies in management – PubMed (nih.gov)

Primary (spontaneous) upper extremity deep vein thrombosis – UpToDate

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