ジュニア期の成功はシニア期の成功に直結するか?
記載者:上村公介
「ジュニアで結果を出した選手は、将来も活躍できるのか?」という問いに、複数の大規模研究が似た答えを出しています。実はジュニアとシニアのエリート選手は、かなり違う集団だということです。
ジュニアの成功はシニアの成功に直結しない
・ジュニア期に国際レベルだった選手のうち、シニアでも国際レベルに残れたのはわずか1割程度。逆にシニアで活躍する選手の8割以上は、ジュニア期には国際レベルに達していなかった
・陸上競技6万人以上のデータでも、U18で上位100位だった選手のうちシニアでも上位100位に残れたのは2割程度
男女で違う「生き残り率」
・陸上競技のデータでは、ジュニアの成功がシニアの成功につながる割合は、男子より女子の方が高い傾向が示されている
・一方、相対年齢効果(早生まれが体格で有利になり選抜されやすい現象)は男性の方が強く、ある国の調査では選抜での相対年齢効果は男性でのみ目立った
背景
もう一つの理由として、思春期が始まる年齢のばらつき(個人差の大きさ)自体は男女でほぼ同じですが、平均的にみると女性の方が思春期の到来が1.5〜2歳ほど早いことが知られています。そのため、U12〜U14のような典型的な選抜年齢では、女性はすでに大半が思春期を通過し体格的にある程度そろっている一方、男性は同じ年齢でも未成熟な選手と早熟な選手が混在しやすく、これが選抜時の有利・不利の差を広げている可能性があります。加えて、男性は思春期のテストステロン増加率が女性よりはるかに大きいため、同じ発達段階の差でも体格・パワーへの影響が大きくなりやすいという機序も考えられています。
現場への示唆
米国スポーツ医学会・米国小児科学会のガイドラインでも、女子体操など一部の早熟型競技を除けば、早期の一種目専門化はエリート到達の必須条件ではなく、多種目を経験して思春期後半(14〜16歳頃)に専門化する方がエリートに到達しやすく、競技継続期間も長い傾向があるとされています。
コメント
選抜されなかったからといって、焦る必要はありません。むしろ、早くに選ばれてしまうことで、その競技に縛られ続けてしまうというデメリットもあるかもしれません。
参考
1. Güllich A, Barth M, Macnamara BN, Hambrick DZ. Quantifying the Extent to Which Successful Juniors and Successful Seniors Are Two Disparate Populations. Sports Med. 2023.
2. Barth M, Güllich A, Macnamara BN, Hambrick DZ. Quantifying the Extent to Which Junior Performance Predicts Senior Performance in Olympic Sports. Sports Med. 2024.
3. Bezuglov E, et al. Successful Young Athletes Have Low Probability of Being Ranked Among the Best Senior Athletes. Front Psychol. 2022.
4. Romann M, Rössler R, Javet M, Faude O. Relative Age Effects in Swiss Talent Development. J Sports Sci. 2018.
5. Pedersen AV, et al. Variations in the Relative Age Effect With Age and Sex. PLoS One. 2022.
6. Kliethermes SA, et al. Defining a Research Agenda for Youth Sport Specialization in the United States. Clin J Sport Med. 2021.
7. Malina RM, Kozieł SM, Králik M, Chrzanowska M, Suder A. Prediction of maturity offset and age at peak height velocity in a longitudinal series of boys and girls. Am J Hum Biol. 2021.
8. Hunter SK, Angadi SS, Bhargava A, et al. The Biological Basis of Sex Differences in Athletic Performance: Consensus Statement for ACSM. Transl J ACSM. 2023.

